【前編】⇒『サヨナラの意味』フラゲ日記 (前編)
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電車はすすむ。
行先である船橋が、どのくらいで着くのか気になって、電車の表示板を確認する。
と、ここで、気が付いた。
次は、「秋葉原」だ。
秋葉原と言えば、日本有数の電気街。であったが、現在はアニメおよびアイドル文化のメッカである。聖地である。最近、日本には聖地が勃興しすぎなような気もするが、ここは正真正銘の聖地だ。
「降りてしまおうか。」
ふと、そんな言葉が頭をよぎる。
表示板を確認すると、船橋まではまだまだある。外はどんよりと一層曇ってきたし、肌寒さも感じる。何より、飯田橋で歩道橋を上がったことで、疲労がたまっている…
端的に言って、
船橋、めんどくね?
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船橋が遠くにかすむ
いやいやいや、ちょっと待て。待ってくれ。何のためにここまで出てきたんだ。サンエトおよび、きいちゃんに会いに行くために、船橋まで出向くんだろう?
少し疲れたからって、それはないぞ。
お前のサンエト愛、きいちゃん愛は、そんなものだったのか。失望させないでくれ。体力なんて、気の持ちようだ。そりゃもう若くはないかもしれないが、思い出せ。『あの教室』で学んだ、あの頃を。
あの、無尽蔵に、無駄にあった体力を。どこにぶつけていいのか、分からなかったパワーを。
思い出せ。
いいか?そのまま電車で、船橋だ。
誰が何と言おうと、きいちゃんだ。
(*´Д`)
敵情視察( ゚Д゚)
ごめん。きいちゃん。
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きいちゃんが呼んでいる
違う。私は断じて違う。私は。
ただ、腹が減っただけだ。だから昼食を食べただけだ。そして少し、ラムタラに寄ってみただけだ。もちろん、サヨナラの意味のCDは売っていた。
しかしあのショップ、2階以上はうっかり行ってはいけないな…男子諸君は、絶対に近づいてはいけない。
推しメンに嫌われるぞ。
「サイテ~」
というきいちゃんの声が響いたため、私は総武線に再び乗り込む。腹も満たされ、だんだんと眠くなってきた。
電車は新小岩を越え、江戸川を渡る。
この辺りまで来ると、乗客もまばら。ゆったりと座れる。反面、どこか物悲しくもある。時間調整のためか、待ち合わせか、気づくと電車は止まったまま動かない。
無機質な音声のアナウンスがホームに響く。イヤフォンからは相変わらず、乃木坂46のキラキラした曲たちが、私の耳元をあざやかに彩る。
しかし、私の気持ちは何ともキラキラしない。
再び、なぜ、わざわざCDを買うためだけに、せっかくの休日に、船橋くんだり (船橋の方、すみません。) まで行くのか、疑問がわいてくる。
今さら、何を言っているのか。
そう理性で言い聞かせるものの、心は正直だ。
この動かない電車の中は、やはりとても寂しい。
葛藤
この寂しい気持ちを今、誰かに話したいなんて、『ないものねだり』だろうか。
さっきの屈強な男たちでもいい。おばさまでもいい。孤独な青空を見つめていた彼でもいい。誰でも大好きDDだ。
もう、帰ろうか。
引き返そうか。
車窓から見える景色はまったくなじみのない町並みだ。
なんて、心細いんだ…
今ならまだ間に合うぞ…
でも…
船橋、最高!
と、バースデーライブの齋藤飛鳥よろしく、気づくと叫んでいた。はぁ。きいちゃんののぼりが温かく迎えてくれる。
来た甲斐があった。
CDの売り場が良く分からなかったので、お店のかわいいお姉さんに聞いてみた。
私「すみません、あのぉ…のぎざかのCDは……」
お姉さん「あー、今日はまだ発売前なんですよ~。」
私「あ、はい。(…そうそう、フラゲ日だよね。だから来たんです!)」
お姉さん「でもまぁ、夜には入ってくると思うんですけどね」
……
……
……
(ノД`)・゜・。
フライングしすぎたらしい。何てこった…。現在、午後1時をまわったところだ。船橋まで来たのに、ゲットできないなんて、そんなことがあるのか……
はぁ…
これもきっと、私が弱気になったからに違いない。秋葉原でCDを買ってこのまま帰ろうかなぁなどと、少しでも思ったからに違いない…。
きいちゃん…
さすがに夜までは待てないので、かわいい店員さんに断りを入れて、売り場の写真を撮らせてもらった。ブログアップの許可ももらい、もう、思い残すことはない…
私は船橋ヨーカドーを後にした。
イヤフォンから流れる曲は、リピートで1曲目に戻る。あのピアノの旋律が聞こえる。私は『サヨナラの意味』を必死で考えながら、船橋に別れを告げた。
ありがとう。きいちゃん。新星堂さん。お姉さん。確かに空振りだったかもしれないが、私を温かく迎えてくれたこと、一生忘れない。
別れ際、もっと好きになる。
2016年
11月8日のことだ。
【追伸】その後、新宿のタワレコでタイプD買いました。