ファンとは無力だ。
アイドルの子を応援しても、夢を叶えさせてあげられる訳ではない。
NHKの朝ドラのプロデューサーなら、来年の朝ドラのヒロインに飛鳥ちゃんをさせてあげられるかもしれない。
NHK大河ドラマのプロデューサーなら2020年の大河ドラマ、主演の明智光秀の妻の役にまりっかにする事ができるのかもしれない。
ブロードウェイのプロデューサーなら、明日の舞台にさゆにゃんを立たせてあげられるかもしれない。
もちろん個人の自由で100%そうできる訳ではないが、少なくとも発言権はあると思う。
でも商社マンにそれはできない。大工は家を作れてもスターは作れない。愛は無力なものだ。
ファンの皆さん大変申し訳ございません。いきなり皆様を斬るような言い方をしてしまって。
でもその怒り、最後まで待ってくれませんか。だってきっとこんな空虚感を感じた事はないですか?
だからアイドルとともに一喜一憂できて、本気になれるのだと私は思います。
ただこんな事言った後に1つだけ述べておきたい事があります。
それぞれの『行くあてのない僕たち』
秋元康さんがインタビューでこうおっしゃっておりました。
「すべてのエンターテインメントは受け手の想像で完成するのです」と。
だから10人いれば10人分の『行くあてのない僕たち』があるのです。例えば、今結ばれない恋愛している人には、駆け落ちソングにも聞こえます。
学生の2人が結婚したくて、でも周囲から反対されて夜行バスに乗り込む。でも衝動で動いたけれどそれでは幸せになれない。
だから旅をして考えなおそうとする2人の姿も見えてきます。でもそれではファンの人が神曲とは言わないでしょう。
ではなぜなのか。
私には2つの『行くあてのない僕たち』が見えてきました。
【参考記事】https://style.nikkei.com/article/DGXMZO07173510T10C16A9000000?channel=DF280120166614
『行くあてのない僕たち』とは?
15枚目シングル『裸足でSummer』のカップリング曲で、伊藤万理華さんと井上小百合さんのユニット曲。
私は初め聞いた時、他ごとをやめて聞き入ってしまいました。歌詞の意味がしっかり分かる訳でもない。その世界間をしっかり理解できる訳ではない。
でもこう心が締め付けられるような、そんな感情に心が包まれました。ただその旋律に心を投影し、そして自分と重なるものも感じたのです。
君はファン
Aメロは、夢が叶う夜明け前、乃木坂メンバーが高速バス(乃木坂46)に乗って夢の方を目指したけれど、うまくいかなくて立ち止まっている。ファンは私(乃木坂メンバー)が夢を叶える事を願っている。
乃木坂メンバーは不甲斐ない自分に何度か涙したと思います。
それでもあどけないファン、いわゆるブレずに応援してくれるファン、自分を信じてくれているファンは何も疑わず応援し続けてくれる。でも乃木坂メンバーは、ファンの人が思っている程私は強くないと、自分の力のなさを感じる。
今回も福神に入れなかった。選抜から外れた。ごめんごめんみんなって思う。自分を客観視した時に感じる情けなさとか。色んな重いが詰まっています。
でも夢は感情論だけではかなわない。冷静にどうするべきかを考えなくては。
また、ファンの人の行動をそのまま詞にしている意味もあります。金曜日の夜、仕事が終わって、夜行バスに乗って握手会に向かう。その寝ている時に見る夢は乃木坂46。
Bメロは、地に足がついた人生(日常)をやめて夢を目指す。その方法として夜行バスに乗り込んだんだ。
君はファン。
これは現実と夢の狭間の話をしている。
平日仕事を頑張って、土日は乃木坂46のメンバーと夢を共有する。そんなファンの人たちの姿も見えてきます。
そんな君(ファン)の手を引いて(握手)、夢の世界に連れていく乃木坂46メンバー。
サビは、メンバーとファンが目指す夢はこの手にできるのか。もちろん全員が全員叶う夢ではない。きっと一握り。
だからそのファンの愛情も無駄に終わるのかもしれない。ファンとしての無力、メンバーとしての無力。でもそれでも力を合わせれば夢は叶うと言うけど、それも理想でしかなく、現実そうはいかない。
でも夢は叶えたい。でもその必勝法もない。そんな心にぽっかり穴が空いた状態。まさに等身大の現状を描いている。
冷静に考えて夢を叶えるには、夢の場所である東京に行くには高速道路を走る夜行バスが速い。だから夜行バスである乃木坂46になろうと思う。そして東京に着いた時、きっと太陽が出ている。光が自分に当たっているのです。
しかし夜行バスを乃木坂46とした時、2番のトラックのコンテナーって何?って思いますよね。それはきっと乃木坂46以外の活動ではないかと考えます。乃木坂46だけで頑張るんじゃなくて、舞台やモデルとかそれぞれの個人活動を頑張って、それが乃木坂46に返って来たり、自分の夢が叶っていくのだと思います。
でもファンの人はメンバーにコーヒーを差し出す。その言葉にメンバーは心を温める。また夢を叶えると燃える。
しかしサビでまた落ちる。ファンに励まされ頑張ると思ったけど、また現実にぶつかる。
でも諦めたくないんだぁ! ファンと決断して分かち合う。そして夢は叶うのか。
西野七瀬さんはフロントに立てない自分がいました。どんなに苦しんでも越えられない壁がある。母は「もうやめなさい」と言いました。でも西野七瀬さんは首を縦に振りませんでした。女子バスケは続かなかった西野七瀬さん。
でも乃木坂46は辞めなかった。夜行バスは下りなかったのです。
今乃木坂46のセンターはと質問に皆さんはこう答える人が多いでしょう。
西野七瀬さんと。
君は本能の自分自身
Aメロは、夢を叶えようと決めた方法で夢を目指したけどうまくいかず、夢を絶対にかなえてやると熱気に溢れたけど、今は落ち込んでその熱気が冷めている。
未熟な私は嫌気がさしてもうダメだと思う。でも落ち着いてもう1度頑張ってみよう。いわゆる自分を客観視しているんですよね。
人は夢を叶えたいと本能で思う。でも感情論だけではかなわない。だから理性で考える。
サッカー選手がワールドカップに行くためにはどうすればいいか。自分に何が足りないのか。それで名門校に行こうとか、決定力を上げる練習しようとかを理性で考えますよね。
Bメロ、地に足がついた考え方をやめて、0.001%の確率かもしれない夢を目指す。その時、夜行バスという夢を叶える場所がある事を知る。それに乗れば夢(東京)に向かっていると。
夜行バスとは学校とか、仕事場、チーム。乃木坂メンバーでいえば乃木坂46。
サビでは、夢が叶うかなんては分からない。だって0.001%の確率なのだから。だから10万人に1人だけが叶う世界。
チームメンバーは仲間でありライバルである。だから足を引っ張ってでも、蹴落としてでも、それを踏み台にして自分が上らないといけない。
そういう舞台なのです。みんなで手を繋いで夢を叶えようなんて無理なのだ。でも仲間じゃん!
でもまばらなです。バラバラなのです。それは野心と仲間心が共存しているから。
でもそれでも夢が叶わないなら別の方法を探そう。もちろんそれが正解は分からない。でもこれでダメだったらそれもダメもかもしれない。
だったらもう諦めよう。今からなら浪人して大学にも入れる。新卒にはなれないけど、中途で会社に入れる。でももう一度夢を目指すならもう後戻りはできない。
きっと夢追い人はこの曲を聞くとこう思うでしょう。現実を言った応援歌であると。
だから乃木坂46メンバーも、そのファンも思う。これは神曲だと。
伊藤万理華と井上小百合
『行くあてのない僕たち』を歌った次のシングルである『サヨナラの意味』では2人とも選抜入りしていました。
その時のインタビューで『行くあてのない僕たち』を歌っている頃は停滞していたと言っていた。まさにサービスエリアに停まっていたみたいです。でもこの経験がすごく大きく働いているようです。
ラーメンとうどんそばを両方をやっている定食屋でラーメン食べたらまずい。コーラはコーラーになっていてよく分かっていない。コップに口紅がついている。という、『行くあてのない僕たち』のショートムービーのシーンですが、そのインタビューで伊藤万理華さんはこう語っています。
「今やるべきこと、やりたいことがあるならやろうみたいに考えるようになった」と迷いが吹っ切れたのように話していました。
井上小百合さんは周りをもっと見るべきと感じたのかもしれません。アンダーとして選抜に入る事で色んなものが見え、客観視して自分や乃木坂46を見る事で何をするべきかを理解したんだと思います。その成長が、たくさんの舞台出演や、選抜常連になっていったんだと思います。
【参考記事】http://realsound.jp/2017/01/post-10820.html
アイドルとファンは運命共同体
アイドルも無力だ。ファンも無力だ。だから協力して一緒に夢を叶えようとする。それは理想論なのかもしれない。
でもアイドルは思う。まばらでも応援してくれている人がいる。だからエンジンは止まる事がないのだ。
エンジンがかかっていればどこへでも行ける。それは夢の世界にも。
夢の東京、渋谷のスクランブル交差点は今日もたくさんの人で賑わっています。